【中小企業の採用担当者へ】新卒人材紹介エージェントの問題点

【中小企業の採用担当者へ】新卒人材紹介エージェントの問題点

「母集団が集まらない。ナビサイトでは応募が来ない。合同説明会に出ても学生が来ない。それなら人材紹介エージェントに頼ろう。」

この判断をした採用担当者を責めるつもりはまったくありません。成功報酬型で初期費用ゼロ、採用できなければ費用ゼロというビジネスモデルは、採用に苦しむ中小企業にとって確かに魅力的に映ります。

しかし、エージェント依存が常態化した時点で、採用は静かに壊れ始めています。この記事では、現場で学生と日常的に接する立場から見えてくる「新卒人材紹介エージェントの落とし穴」を3つに整理してお伝えします。統計データに基づく事実と、現場での観察を明確に分けて整理します。


この記事の要点

  • 新卒人材紹介の利用企業は2019年12.3%から2026年卒17.5%へと拡大(リクルート就職みらい研究所)
  • 2025年卒採用で東京商工会議所会員企業の98.7%が「厳しい採用環境」と回答、充足率50%未満が47.5%
  • 新卒人材紹介の費用は1名あたり数十万円〜100万円超とエージェントによって幅がある
  • 2026年3月、立教大学・中央大学が悪質エージェントに対して公式の注意喚起を発出
  • エージェントは「補完」として使い、採用ホームページ・説明会・動画コンテンツといった採用資産への投資を中長期戦略の軸に置くべき
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そもそも、なぜ中小企業はエージェントに流れるのか

まず採用環境の現状を、信頼できる統計データで確認します。

キャリタスの調査によると、従業員300人未満の企業では、4社に1社(25.9%)が「前年よりエントリー数が3割以上減少した」と回答しています(2025年卒採用・中間調査)。※1

東京商工会議所の調査(2025年新卒採用)では、「厳しい採用環境である」と回答した企業の割合は98.7%に達し、採用計画人数に対する充足率50%未満の企業が47.5%、内々定者がいない企業が19.9%を占めています。※2

こうした状況のなか、新卒人材紹介の利用は明確に拡大しています。リクルート就職みらい研究所「就職白書2026」によると、新卒人材紹介の利用企業は2019年の12.3%から2026年卒では17.5%へと増加しています。※3

ダイレクトリクルーティングを試みても、知名度のない中小企業へのスカウト返信率は低く、返信があっても選考に繋がらないケースが多い。そうなると「入社したときだけ費用が発生する」新卒エージェントは、短期的には合理的な選択肢に見えます。

ただし、そこには3つの深刻な落とし穴があります。


落とし穴① 採用コストが雪だるま式に膨らむ

新卒人材紹介の費用は、1名あたり数十万円〜100万円超になるケースが多く、料金体系は固定報酬型、初年度年収連動型(年収の30〜35%前後が多い)など、エージェントによって異なります。理系学生への加算や、特定職種への加算が設定されている場合も少なくありません。※4

問題は、エージェントに依存する体制が固まると、採用予定人数の大半をエージェント経由で賄うことになり、採用予算が青天井になる点です。たとえば年間5名採用する予定の中小企業が、そのうち3名をエージェント経由で採用すれば、1名あたり80万円としても、それだけで240万円のコストが発生します。

さらに本質的な問題は、コスト以上のところにあります。エージェントに頼っている限り、自社の採用競争力は構造的に向上しないという事実です。採用ブランディング、採用ホームページ、インターンシップの設計——こういった「採用資産」を積み上げる動機が生まれないまま、毎年エージェント費用だけが発生し続けます。

エージェントは「今年の採用」を解決するが、「来年の採用環境」は何も改善しない。


落とし穴② 総合型エージェントを利用する学生の傾向

ここからは、統計ではなく「現場での観察」として書きます。学生と日常的に接している立場から見えてきた傾向です。一般化を避け、観察として読んでいただければと思います。

まず前提として、IT人材特化型・体育会特化型のような専門エージェントは別の話です。そうした特化型は、何かに打ち込んできた学生が時間的制約から就活に出遅れたケースが多く、一定の質が担保されています。

議論したいのは総合型の新卒エージェントのほうです。現場で学生と接していると、総合型エージェント利用者の中には「自分で企業を探すことに不安を感じている」「第三者の支援を受けながら進めたい」と考える学生が一定数いることが見えてきます。これは学生の能力の問題ではなく、就活の進め方として支援に頼るスタイルを選んだということです。

もちろん、優秀層がエージェントを併用しているケースや、理系上位層が情報収集目的で登録しているケースもあります。総合型エージェント利用者を一括りにすることはできません。

ただ、採用担当者として意識しておきたいのは、「自分の軸が固まっていない学生」がエージェントから紹介された場合、その学生の志望度はゼロから始まるということです。自社の魅力を一から伝え、納得感を醸成する作業を、面接という限られた時間で行わなければなりません。これは通常のナビサイト経由・自社応募経由の学生とは異なるアプローチが必要になります。

採用担当者が「エージェント経由で採用したけど、なんとなく決まった感じがする」と感じるのは、この構造的な特性が関係している可能性があります。


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落とし穴③ 大学との関係が静かに悪化するリスク

これは採用担当者として必ずキャッチアップしておくべき情報です。2026年3月、立教大学のキャリアセンターが公式Xアカウントで悪質な新卒エージェントに対して「やめてください」と投稿し、半日で70万インプレッションを記録しました。※5

立教大学のキャリアセンターに寄せられた学生からの相談内容は以下のとおりです。※5

  • 特定企業の内定承諾を前提に、他に選考中の全企業を辞退するよう証明資料の提出を求められた
  • 本人の了承なく面接が設定された
  • 興味のない企業を強く勧められた
  • 1日に10回以上電話がかかってきた

同時期に中央大学のキャリアセンターも公式サイトで注意喚起を発出しており、「『辞退した場合は金銭を請求されることがある』といった金銭的脅しを伴う極めて悪質で、法的根拠も乏しい威嚇行為」が確認されていると明記しています。※6

テレビ朝日系ANNの報道によると、立教大学ではエージェントに関する学生からの相談が年々増加し、直近1年間で167件に達しているとのことです。※7

採用担当者にとって厄介なのは、問題行為を起こしているのはエージェントなのに、大学のキャリアセンターには紹介先企業の名前も一緒に伝わってしまうという現実です。学生が大学に相談する際、「○○エージェント経由で△△社の選考に進んでいて……」という形で情報が共有されるため、企業名とエージェントの問題行為がセットで認識されるリスクがあります。

正確に処理されれば「悪質なのはエージェント側」と整理されますが、現場では混同が起きやすい。結果として、学内セミナーに呼ばれなくなる、大学訪問のアポが取れなくなる、といった形で採用活動に支障が出る可能性は否定できません。エージェントを使い続けることで、大学との関係が静かに傷つくリスクは見過ごせない論点です。


では、どうするべきか

新卒エージェントを完全に否定するつもりはありません。採用計画の最後の1〜2名を補完する手段として使うのは合理的です。

ただし、依存することと活用することは、まったく別の話です。

中小企業が中長期的な採用力をつけるためには、エージェントではなく「採用資産」を積み上げる視点が不可欠です。具体的には以下の3点です。

1. 採用ホームページと説明会の企画設計を見直す

採用ホームページは志望度を爆発的に高めるツールではありません。しかし、学生が「この会社を受けてみよう」と判断する最初の接点として機能します。古い社員写真、ありきたりな文言、どこに何が書いてあるかわからない構造——これだけで離脱が起きます。

説明会も同様で、「来てほしい」と思うだけでは来ません。説明会に参加してみようと思わせるための施策と、参加した後に志望度を高めるための施策は別々に設計する必要があります。カスタマージャーニーの考え方を採用に持ち込むことが、ここで効いてきます。

2. 動画コンテンツで学生の「解像度」を上げる

テキストで「やりがいのある仕事です」と書いても、学生には何も伝わりません。実際の社員が、実際の言葉で語る短尺動画のほうが、はるかに情報密度が高く、学生の共感を引き出します。インターンシップ紹介動画、社員インタビュー動画は、一度作れば複数の接点で継続的に使える採用資産になります。

3. 採用コストの「使い方」を見直す

エージェントで1名採用するコスト(数十万〜100万円超)があれば、採用ホームページのリニューアルや動画コンテンツの制作に投資できます。エージェントのコストは単年で消費されますが、コンテンツ資産は中長期にわたって活用できます。

採用施策を継続することで、2〜3年後にはナビサイトや合同説明会経由で流入する学生の質と量が変わってくる可能性があります。エージェントへの依存度を下げながら採用単価を圧縮できれば、これが本来目指すべき採用のあり方です。


まとめ

  • 新卒人材紹介エージェントは成功報酬型ゆえに使いやすいが、依存すると採用コストが膨らみ続ける
  • 総合型エージェント経由の学生は、自社の魅力を一から伝える必要があるケースが多く、通常の応募経路とは異なるアプローチが必要
  • 立教大学・中央大学など複数の大学が悪質エージェントへの注意喚起を公式発信しており、企業の大学関係に影響が出るリスクがある
  • エージェントは「補完」として使うに留め、採用ホームページ・説明会設計・動画コンテンツといった採用資産の構築に予算を振り向けることが中長期の解

採用市場が厳しいほど、目先の「採れる手段」に飛びつきたくなるのは自然な反応です。ただ、中小企業の採用力を本当の意味で強化するには、資産として積み上がる投資をしていくことが必要です。



参考資料

※1 株式会社キャリタス「2025年卒・新卒採用に関する企業調査 中間調査(2024年7月)」
https://www.career-tasu.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/07/2025_chukanchosa_k.pdf

※2 東京商工会議所「新卒者の採用・選考活動動向に関する調査」
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1204567

※3 リクルート就職みらい研究所「就職白書2026」(企業側調査・採用方法/形態における「新卒の人材紹介会社を介しての採用」)
https://shushokumirai.recruit.co.jp/research_report/

※4 リクルートエージェント「紹介料(紹介手数料)とは?人材紹介サービスにおける紹介料の相場を解説」
https://www.r-agent.com/business/knowhow/article/22565/

※5 立教大学キャリアセンター 公式X投稿(2026年3月19日)
https://www.businessinsider.jp/article/2604-job-agent-troubles/(Business Insider Japan掲載)

※6 中央大学キャリアセンター「主に27卒の学生へ 就職エージェントによる内定承諾の強要(オワハラ)および不当な金銭請求に関する注意喚起」(2026年3月17日)
https://www.chuo-u.ac.jp/career/center/

※7 テレビ朝日系ANN「就活生への『オワハラ』横行 悪質な新卒エージェント 大学が注意呼びかけ」(2026年3月30日放送)
https://news.yahoo.co.jp/articles/f87de4533bd268aae17fcd56456e05002c43738d

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