こんにちは、羽田です。「説明会を開いても応募につながらない」「参加者が来ても志望度が上がっていない気がする」——そんな課題を感じている採用担当者の方は少なくないのではないでしょうか。
採用マーケティングの観点から言えば、会社説明会は依然として志望度形成における重要なタッチポイントです。ある調査では、志望度が上がったプロセスとして「説明会」を挙げた学生が42.07%に上り、インターンシップ(39.07%)をわずかに上回っています(株式会社ベイジ「新卒採用における採用サイト利用実態調査(2024年度版)」(2025年3月公表))。一方、同じ説明会が志望度を下げた経験としても23.24%に挙げられており、設計次第でプラスにもマイナスにも大きく振れることを示しています。
特に中小企業にとっては、知名度という武器がない分、説明会の「中身」が勝負の分かれ目になります。本記事では、弊社が独自に収集した学生の声と、各種調査データをもとに、志望度を高める説明会設計の実践的なポイントをまとめました。
1. 説明会の位置づけが変わっている——「説明をする場」から「体験の場」へ
インターネットでいつでも企業情報を調べられる時代において、学生が時間を使って説明会に参加する理由は「情報収集」ではなくなっています。HPやナビサイトで概要を把握した上で参加する学生がほとんどであり、彼らが説明会に求めているのは一言で言えば「体験」です。
ではどんな「体験」が学生の参加意欲を掻き立てるのか。それは学生が「自分との共通点」を見出せる体験です。仕事内容・職場の雰囲気・社員のキャラクターを通じて「自分がここで働いているイメージが持てるかどうか」——説明会の核心はここにあります。
社名で集客できる大企業は「情報を渡す場」としての説明会でも機能しますが、知名度が低い中小企業が同じアプローチを取ると、参加する前から関心が薄かった学生の志望度をさらに下げるリスクがあります。中小企業の説明会は、「説明をする会」ではなく「志望動機を育てる場」として設計する必要があります。
2. 志望度が上がった説明会に共通する要素
弊社が実施した学生調査(25卒対象、n=102、2024年6月実施)で「知らない会社で志望度が上がった説明会」の体験を自由記述で収集したところ、回答の大部分に共通するパターンが見えてきました。
①先輩社員との座談会・少人数でのリアルな対話
回答者の多くが「社員との座談会」「少人数での質疑応答」を挙げていました。「社員さんとのゆるい座談会。学生からのぶっちゃけた質問に対し、リアルな声をきくことができたため(宮城学院女子大学・文系・女性)」「少人数座談会が設けられている。質問をしやすいのと、人事以外の社員とも交流ができ理解しやすい(武蔵野大学・文系・女性)」といった声に代表されるように、若手社員の「生の声」への需要は非常に高い状況です。
キャリタス就活の調査でも、会場型説明会で参加者が最も望む要素として「社員と話せる場が設けられている」が約7割(69.9%)に達しており(※2)、この傾向は第三者データでも裏付けられています。
②職種・仕事内容の具体的な説明
「職種に関する情報。事業だけでなく、どういう仕事をするのかイメージできると志望度を測りやすかった(立命館大学・文系・女性)」「会社説明だけでなく、事業部ごとや職種ごとの説明時間があったところ。やっぱ、HP見るだけじゃ事業や仕事内容にまで理解が及ばない(静岡大学・文系・女性)」——HPに書いていない仕事の解像度を上げる情報こそが、志望度を高める鍵です。
③入社後のギャップも含めたリアルな情報
「先輩社員との座談会。入社してからのギャップや辛さを知ることができて社会に出たときのショックを事前に知ることができた(名古屋商科大学・文系・男性)」という声が示すように、良い面だけを並べた説明より、ギャップも含めたリアルな情報提供の方が信頼感につながります。
3. タイパ世代には「無駄を省く」設計が必須
Z世代の学生はタイムパフォーマンスを強く意識します。MIL株式会社の調査では、学生の72.0%が「説明会の望ましい形式はオンライン」と回答しており、その根底には「移動時間を省いて多くの企業を効率的に比較したい」という意識があります(MIL株式会社「会社説明会に関する意識調査(Z世代400名)」)。また、録画形式のWEB説明会を「早送りしながら見る」学生が約45.9%に上る(株式会社キャリタス「キャリタス就活 学生モニター2025 調査結果」(2024年3月発行))というデータも、学生の時間感覚を如実に示しています。
この前提に立てば、説明会における以下のコンテンツは大幅に削減するか、事前送付に切り替えることを検討すべきです。
- 業界説明:就活後期の学生はすでに他社で複数回聞いている可能性が高い。時間を割かないか、「当社が業界内でどう違うか」という切り口に絞る
- 会社概要説明:ほぼ不要。5分程度の動画にしてYouTubeにアップし、プレエントリー者に事前送付するのがベスト
- トップメッセージ:ご挨拶程度なら不要。ビジョンや戦略を語れるなら大歓迎
- 福利厚生説明:よほど特徴的な制度でなければ詳細な紹介は不要。やるなら制度を活用している社員のユースケースを紹介する
会社概要はZoomなどで収録しプレエントリー者に事前送付することで、説明会当日の時間をすべて「体験」と「対話」に充てられます。
4. 「弱みを伝えること」が好印象になる——データが示す逆転の発想
弊社の調査(25卒対象、n=102)で「企業が自社の弱みや課題を話しているのを聞いたことはありますか?」と尋ねたところ、「ある」「ない」がちょうど半々(各50%)という結果でした。しかし、弱みを話されたときの印象を自由記述で収集すると、その大部分がポジティブな反応でした。
「知名度が低く新規案件が取りにくいと聞いた。自分もそうだろうなとは思っていたので、特にマイナスな印象を抱くことはなかった。むしろ正直に話してくれたことに好感を持ちました。」(関西大学・女)
「業界内の立ち位置や課題を話してくれた。弱みをしっかり把握し、それを話すことができるということは、意識があることや会社の透明性を知ることができたので、プラスの印象を持ちました。」(宮崎大学・女)
学生が企業のネガティブな情報を求める背景には「企業はいいことしか言わない」という前提認識があります。だからこそ口コミサイトを見るのです。この心理を逆手に取り、ビジネス上の課題感を現状ベースで伝えた上で「だからこそこんな取り組みをしています」「こういう展望があります」と続けることで、誠実さと将来性を同時に伝えることができます。
ただし、注意が必要な「ネガティブ情報」もあります。同調査で「どんな情報だと志望度が下がるか」を尋ねたところ、「離職率」(15件)、「残業」(13件)、「転勤」(9件)が上位に並び、「働き方」に関する話題は志望度を下げる要因であることがわかりました。ビジネス上の課題と、労働環境のネガティブ情報は明確に切り分けて考える必要があります。
5. 志望度を下げる説明会のパターン
弊社の調査で「知らない会社で志望度が下がった説明会」についても同様に収集しました(回答数16件)。共通していたのは以下のパターンです。
- 一方向型の進行:「一方的な会話のため、誰かに当てて聞いたりすることなく、つまらない」「動画を視聴するだけで質問時間がなかった」
- HPの情報をなぞるだけ:「HPにある情報を読むだけ→参加しなくても分かる情報だったので意味がなかった」
- 「凄さ」の押しつけ:「社長登壇、ここだけ、大手取引実績など”凄さ”の話が多い説明会。私は押し付けがましいと感じてしまった」
- 優秀社員だけを前面に出す:「優秀な社員のみを前面に押し出したキャリア形成の話。現実的ではないと感じた」
- 専門用語の多用:「難しい単語を並べられると『このくらい分かって当たり前』と言われているようで冷たく感じた」
- 運営の粗さ:「Zoomの使い方や説明会の運営が下手くそだと、志望度が下がった」
「企業の実力をアピールしたい」という心理から生まれる「凄さ訴求」や「優秀人材の登壇」が、むしろ学生の志望度を下げているという実態は、特に中小企業の採用担当者に知っておいていただきたい点です。
6. 中小企業が「対面説明会」で差をつける実践ポイント
ここまでのデータを踏まえ、中小企業が対面説明会で志望度を高めるための設計ポイントを整理します。
(1)説明会タイトルと概要文から設計する
学生は複数の説明会から参加するものを選別します。「当社の会社説明会」というタイトルでは、そもそも参加意欲が生まれません。「どんな人がどんな仕事をしているか」が伝わるタイトルと概要文を用意することが、参加率向上の第一歩です。地味で大変な作業ですが、ここへの投資対効果は高いと考えています。
(2)会社概要は「事前送付」に切り替える
プレエントリー者に会社概要動画(5分程度)を送付し、当日は「概要はご覧いただいた前提」でスタートします。これにより当日の時間をすべて「体験」と「対話」に充てることができます。
(3)若手社員との少人数座談会を必ず設ける
キャリタスの調査でも対面説明会で「社員と話せる場」を望む学生が約7割を占めています(※2)。人事担当者ではなく、現場の若手社員が「ぶっちゃけた質問」に答える時間を設けることが、リアリティと信頼感を生みます。
(4)「働くイメージ」が持てる情報設計にする
学生が説明会に求める本質は「働くイメージが持てるか」です。1日のスケジュール、プロジェクトの進め方、社員同士の関係性——HPでは伝わらないこうした情報が志望動機の材料になります。
(5)ビジネス上の課題を「展望とセット」で伝える
「うちの弱みはここです。だからこそ、こういうことに取り組んでいて、こんな展望があります」——この文脈で語られるネガティブ情報は、誠実さの証明になります。逆に離職率や残業時間を正直に開示することは志望度を下げるリスクがあるため、切り分けが必要です。
まとめ
中小企業の会社説明会において最も重要な視点は、「企業が伝えたいことを話す場」から「学生が自分との共通点を見つける場」への転換です。知名度がない分、説明会という場での「体験の質」が直接的に採用結果に影響します。
会社概要は事前送付、当日は座談会と仕事体験談に集中する——この一点を変えるだけでも、説明会後の志望度は大きく変わります。ぜひ次回の説明会設計の見直しに活かしてみてください。
弊社では中小・中堅企業向けに説明会設計のご支援を行っています。具体的なプログラム設計や改善のご相談は、お気軽にお問い合わせください。
【参考データ・引用元】
- ※1 株式会社ベイジ「新卒採用における採用サイト利用実態調査(2024年度版)」(2025年3月公表)
URL:https://baigie.me/recruit-blog/2025/03/12/newgrad-survey-2024/ - ※2 株式会社キャリタス「キャリタス就活 学生モニター2025 調査結果」(2024年3月発行)
URL:https://www.career-tasu.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/03/202403_gakuseichosa_kakuho.pdf
※関連プレスリリース:https://www.career-tasu.co.jp/press_release/10828/ - ※3 MIL株式会社「会社説明会に関する意識調査(Z世代400名)」
※関連記事:https://edenred.jp/article/hr-recruiting/347/ - Strobolights調べ「25卒学生を対象とした説明会・ネガティブ情報に関する調査」n=102(2024年6月18日〜30日)
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