こんにちは、Strobolightsの羽田です。「オヤカク(親確)」という言葉を、新卒採用の現場で聞くことが増えてきました。内定を出した後、学生の保護者に対して入社への同意を確認したり、説明会や懇親会に招待したりする取り組みを指す言葉です。採用支援サービス各社がこぞって「オヤカク対策」を打ち出し、一種のトレンドワードとして定着しつつあります。私もTBSやテレビ東京、東洋経済など複数のメディアでコメントを求められ、お話ししてまいりました。
企業様の中には保護者対策に予算をかけて、内定辞退を防止しようとする企業様もいらっしゃるようです。ただ、結論から申し上げると、オヤカクに大きな予算と工数を割くことは、内定辞退の改善にほとんど効果がないと考えています。少なくとも、それを内定辞退防止の主軸に据えるのは、的外れになってしまう可能性があります。現場の実態と客観的なデータの両面から、その理由をご説明します。
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「親が反対したから辞退」は本当に起きているのか
企業の採用担当者から「学生が親を理由に内定辞退してきた」という話を聞くことは珍しくありません。ただ、学生側の声を直接聞くと、まったく異なる景色が見えてきます。
筆者は年間200人前後の学生と顔と名前が一致する状態で就活相談を受けており、人材エージェントとしてではなくフラットな立場でコミュニケーションをとっています。その中で「保護者に反対されたから内定を辞退した」という学生に出会ったことは、ほとんどありません。試しに学生約100人にアンケート調査をしたところ、「親が理由で泣く泣く内定を辞退した」と答えた学生は0人でした。
では、なぜ企業の耳には「親の反対」という言葉が届くのでしょうか。おそらく、学生が辞退を伝える際に「親を口実にしている」ケースがほとんどではないかと推察しています。
昨今の学生、特にZ世代には「怒られることへの恐怖感」が強い傾向があります。内定を承諾した後に辞退を申し出れば、採用担当者に叱責されるのではないかと不安になる学生は少なくありません。そこで最も使いやすい「盾」が親。「親が反対していまして…」と言えば、企業側もそれ以上追及しづらい。学生にとって、これは一種の自衛策になっています。まあ、気持ちは分からんでもないです(笑)。
私は企業様、学生両方に日頃からコミュニケーションを取っているので、企業様が「保護者を説得しないと」と言い、学生は「親は口実です」という両方を聞いています。悲しいコミュニケーションエラーが起きているのです。
内定辞退の本質は「志望度の低さ」にある
内定辞退の実態をデータで確認すると、この構図はより鮮明になります。リクルート就職みらい研究所の調査によると、2025年卒の内定辞退率は63.8%に達しています(参照:就職プロセス調査(2025年卒))。内定を出した学生のおよそ3人に2人が辞退するという計算です。
なぜここまで辞退率が高いのでしょうか。内定承諾後も就活を継続した学生にその理由を聞いた調査では、「より志望度の高い企業の選考が残っていたから」が68.4%でトップでした(参照:2025年卒の内定承諾・辞退に関する実態調査|キャリアチケット)。さらに、内定を承諾した後も就活を継続していた学生は約半数にのぼります。
パーソル総合研究所の調査でも、内定承諾企業に対してエントリーシート提出時点から一貫して「第1志望だった」と答えた学生は42.3%に過ぎず、残る57.7%はもともと第2志望以下だったか、途中で志望順位が変わっていました(参照:新卒者の内定辞退に関する定量調査|パーソル総合研究所)。
これが現実の姿です。多くの学生は、志望度が十分に上がっていないまま、とりあえず内定を承諾しています。そして志望度の高い企業の内定が取れたタイミングで辞退する。その際に使う口実のひとつが「親」になっているということです。
オヤカク対策にお金を使う前に、考えて欲しいこと
一方で、現代の学生と保護者の距離感が近くなっているのは事実です。マイナビの調査によれば、就活において企業選びや職種選びに親の意見を参考にすると答えた学生の割合は、女子で49.2%、男子でも40.0%にのぼります。就活の相談相手として最も多いのは母親(68.1%)、次いで父親(28%)という結果も出ています(参照:就職活動に対する保護者の意識調査|マイナビ/ネオキャリア)。
こうした背景から、保護者向けの情報発信が完全に無意味とまでは言いません。ただ、そこに過剰な予算と工数を投じても、内定辞退率が劇的に改善することは期待しにくいと感じています。根本の問題は、選考プロセスを通じた志望度の醸成が十分でないことにあるからです。
インタツアーが23〜24卒を対象に行った調査によると、選考・内定の辞退理由は大きく「選考早期に社風が合わないと感じた」「より志望度の高い企業の内定を得て辞退した」の2パターンに集約されます。また、選考や内定を辞退する決定的な要因として「面接官の印象が悪い」が上位に挙がっています(参照:内定承諾・辞退の決定要因調査|インタツアー)。
さらにパーソル総合研究所の調査では、面接は1次、2次と回を重ねるごとに「第1志望割合」が上昇していることが確認されています。つまり、志望度を高めるのは保護者へのアプローチではなく、選考体験の質そのものだということです。
保護者が本当に気にしていること、企業が伝えるべきこと
それでも保護者向けに何かできることがあるとすれば、何を伝えるべきでしょうか。マイナビの調査では、保護者が子どもの就職先に望むこととして「経営が安定していること」が51.5%でトップを占めています(参照:就職活動に対する保護者の意識調査|マイナビ)。
ただ、今の時代に「どこの会社に入れば一生安泰」という感覚を持っている保護者は、以前ほど多くないはずです。それよりも保護者が実際に気にしているのは、「わが子がその会社で健康的に、人間らしく働けるのか」というワークライフの実態ではないでしょうか。
多くの企業が「福利厚生が充実しています」と伝えます。しかし制度名を列挙するだけでは、学生はその内容を十分に理解できていないことが多いです。福利厚生に関心を持っている学生でも、個別の制度の内容までは実はあまりよく把握していない、というのが実情です。「社員の間で実際に好評な制度はこれで、こういう場面で使われています」というように、学生が自分の言葉で保護者に説明できるレベルまで具体化して伝えることが大切です。そうして初めて、保護者の漠然とした不安は和らいでいきます。
まとめ:トレンドワードに惑わされず、選考体験に投資を
オヤカクは一種の流行語になっています。支援サービスも増え、「やらなければ遅れをとる」という空気が採用現場に生まれつつあります。しかし、現場での実態と複数の調査データが示しているのは、内定辞退の本質的な原因は志望度不足であり、保護者対策だけで解決できる問題ではないということです。
限られた予算とリソースをどこに使うべきか、優先順位を整理してみてください。選考プロセスを通じて自社で働く魅力をしっかり伝えること。学生が入社前に抱える不安や疑問をていねいに解消すること。面接官の質を高め、選考体験そのものを学生にとって意味あるものにすること。これらに注力した結果として志望度が上がれば、保護者の賛否は自然と問題になりにくくなります。
「オヤカク」というトレンドワードに予算を割く前に、まず自社の選考体験を見直してみてはいかがでしょうか。そこにこそ、内定辞退率を下げる本質的なヒントがあると考えています。
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